コンビニよりも多い歯科、どうやって選ぶ?

厚生労働省が医療施設の動態調査を実施していることはご存知ですか。厚生労働省のホームページの統計情報白書の項目に医療施設調査があります。種類別、開設者別、都道府県別に病床数と施設数を公開しています。平成28年度の結果では歯科診療所は68940施設、203増加という結果が出ています。

歯科診療所は病院とは違い、医療法人が13393、個人が54930と個人事業者が圧倒的に多いのが特徴です。個人事業者数は前年比0.6パーセント減少していますが、医療法人数が前年比4パーセント上昇していますので個人事業者から法人事業者への切り替えが進んでいることがわかります。歯科医師過剰の問題は歯学部の定員が約2500人ということや平成22年度に歯科医師が10万人を突破したことからも明らかで抑制策が推進されています。人口10万人に対して50人程度が望ましいといわれています。

競争が激しいため収益悪化となり、日曜診療や深夜診療を実施している歯科も珍しくなくなってきました。私立大学の歯学部入試は倍率が2倍以下の学部が80パーセントを占め、歯科医師の劣化に伴う医療水準の低下が懸念されているため、国家試験の水準を上げることで対応しています。では実際の歯科診療所数を都道府県別に比較してみましょう。全国で6万8千以上ある歯科でも都道府県別にみるとやはり差が明らかになります。

トップは東京の10600、5500以上あるのが2位の大阪、5000近くあるのが3位の神奈川、3000近くあるいは3000以上あるのが北海道、埼玉、千葉、愛知、兵庫、福岡です。1000近くあるいは1000以上あるのは宮城、栃木、群馬、新潟、長野、岐阜、京都、広島です。最も少ないのが鳥取で島根、福井が200台です。地域の面積や人口密度と詳細に比較検討しているわけではなく、数値での比較になりますが、関東圏で2万3千、近畿圏で1万、東海圏で7千と大都市圏で4万件台となることを考えるとやはり開業の偏重がみられることは否めません。

東京では現在1日1軒のペースで歯科が廃業しているともいわれているほど過剰な供給となっています。ちなみに歯科衛生士の就業者数は12万3千人で9割近くが歯科診療所に就業しています。歯科技工所は全国に1万9千、技工士数は2万4千人です。東京、群馬、京都の技工所が1000件以上、最大が千葉の1855か所、2千3百人の勤務でどの技工所も数人で経営しているという零細企業になります。

歯科技工士は全国に3万4千人ほどいますが、事業所も全国にあり都道府県1か所につき数の少ない福井や島根、鳥取、奈良、沖縄でも200件以上あります。しかし1か所あたりに平均2名とぎりぎりの状態で運営していることがわかります。衛生士は全国で12万人で年間5千人から7千人が国家試験に合格し、ほぼ9割が歯科診療所で働くことになりますが、実際に働いているのは合格者数の半分程度だと考えられています。出産、育児、高齢、他業種への転職を理由として年間3千人くらいが転職か辞職していると考えられています。

歯科衛生士も歯科技工士も専門コースを卒業してほぼ9割ほどが国家試験に合格していますが、コースへの志望者が減少していることが指摘されています。衛生士は長時間勤務が多いことやクリニックに1名か2名という働き方のため休みがとりにくいなどの理由があり、同じ理由で復職が難しいという点が指摘されています。歯科技工士も事業所に平均1名か2名のため、長時間労働になり納期が厳しいため離職率が高いといわれています。技工料も海外との競争により利益が出づらくなっています。

歯科医師の技術やクリニックのサービスが歯科衛生士や歯科技工士に頼るところが大きいことから考えるとかなり厳しい現実となっています。歯科の医療保険点数が低いという理由が歯科クリニックの競争を激しくしているという原因にされていますが、実際にはどうなのでしょうか。歯科の点数は25年前からほとんど変わっていないといわれています。これは国のほうが歯科が増えすぎてしまったために淘汰させるため、あえて点数をあげていないという政策的な立場からの見方もなされています。

例えば歯周病の基本検査なら20歯以上なら200点、19歯までなら110点と数と内容によってあらかじめ決められています。歯肉の検査をした後でなければ歯石除去の治療ができない、つまり点数が獲得できないといったように手順が決められており、合理的な治療が行われていなければならないことになります。歯科では虫歯の治療、歯肉の治療、歯槽膿漏の処置、歯磨き指導など頼んでいないのに検査料が取られたといった印象を受けることがありますが、実際には一連の作業としての検査や処置をしなければ治療ができないということが多いのです。人件費や材料費などは上がっているのにも関わらず、点数が低いままで良心的な治療をしてくれている歯科ほど利益が上がらずに自助努力しているということもあります。

特に初診の場合には口の中全体を診察する必要があるため、患者様にとっては高額で負担を感じますが、歯科にとっては余裕があるわけではないということも多いのです。歯科医のワーキングプア化が指摘されていますが、本当なのでしょうか。診療報酬の点数は矛盾が多く、利益が出せないということもよく問題視されています。もちろん歯科医になるまでの学費やクリニックを開設するための費用などで負担が多いということは当然ですが、歯科の点数が低いということがそのままワーキングプア化につながっているというわけではありません。

歯科はもともと細かい神経を使う作業が多いため高齢になった医師には向かない、技術が進歩しており素材も海外から安い材料を手に入れることができるため、技工料をセットにした歯科費用は安くならざるを得ない、また最新式の設備を導入しなければ繊細な治療ができない、衛生面を徹底しようとすると使い捨てなどが増えて手間と時間と費用がかかるなどの指摘ができます。そのため古いクリニックよりも新しいクリニックを患者様側から見れば当然選びますし、保険診療よりも自由診療で審美を重視することになります。虫歯や歯周病などの難しくて時間のかかる治療を行っても1日の売り上げは外科の10分の1といわれており、その中から人件費や材料費、技工費などを負担することになりますから、やはり医療サービスの中で歯科医は負担が大きいといえます。しかしその分自由裁量で工夫することもできるといえ、淘汰が激しくなることは間違いないでしょう。

では患者様にとってよりよいサービスを提供してくれる歯科クリニックを選ぶためにはどんな点を注意すればいいでしょうか。1キロ圏内に10件以上のクリニックがある場所も少なくない中で、どのクリニックを選べばいいのかというのは難しい問題です。まずは根幹治療、インプラント、審美など専門性の高いところを選ぶべきです。最近なら口臭治療、歯周病治療などを定期的に検査しておくことで将来自分の歯できちんと物が噛めるクオリティの高い生活を維持することができるようになるからです。

また歯周病や虫歯の予防には歯のクリーニングが重要になりますので、専門の衛生士が在籍している、クリーニングやホワイトニングのためのブースが用意されているなど衛生面や技術面、サービス面で配慮されているクリニックがおすすめです。院内が清潔であることは言うまでもありません。予防歯科に力を入れているクリニックに定期的に通うことで治療が難しく痛くなることを予防することができ、結果的に負担が少なくなります。ホームページを開設していることは受け入れ態勢が整っていることを意味していますから、医療設備が整っているかどうか、院内の雰囲気がどうかなどをチェックし、必要なサービスについてメール相談をしてみることがおすすめです。

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